事務所だより

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「副業収入が事業所得となるか、雑所得となるかの判断」

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1.副業収入を事業所得にしたいわけ

 個人の確定申告で副業収入を事業所得として申告できれば、大きく4つのメリットがあります。
 1つ目は、記帳をして確定申告書に貸借対照表と損益計算書を添付する必要がありますが、最大で65万円を特別控除として差し引けることです。
 2つ目は、赤字となった場合には給与所得や不動産所得などと通算できることです。さらに、それでも赤字が残った場合には、それを翌年以降3年間繰り越すことができます。
 3つ目は、事前に税務署へ金額等を届け出ることで、同居している親族に対して給与を支払い、経費として計上できることです。

事務所だより  4つ目は、10万円以上のパソコンなどの固定資産を購入した場合には、原則は、減価償却費として数年に渡って経費として計上します。しかし、青色申告という条件はありますが、30万円未満の固定資産であれば年間300万円まで、購入したときに全額を経費として計上できるのです。
 もし、副業を雑所得として申告するならば、これらのメリットはすべて使えないことになります。

2.国税庁が示している判断

 今まで事業所得と雑所得の境目の判断はハッキリしていませんでしたが、国税庁が通達を改正すると同時にその解説を発表しています。その結果、下記のように判断されることになりました。

収入金額 記帳・帳簿書類の保存
あり なし
300万円超 概ね事業所得
(注)
概ね雑所得
300万円以下 雑所得

(注)次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断する。
① その所得の収入金額が僅少と認められる場合
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合

事務所だより  まず、記帳・帳簿書類の保存がない場合にはその事業について営利性、継続性、企画遂行性を有しているとは認められないとして雑所得として推定されてしまいます。ただし、収入金額が300万円超の規模であれば、実態から事業所得と認められる場合もあるとしています。とはいえ、副業収入について会計ソフトに入力しさえすれば、自動的に記帳・帳簿書類の保存ができるので、それは最低限行いましょう。

 次に、記帳・帳簿書類の保存をしていても、「注」書きに該当すれば、雑所得と判断されてしまうのです。
 ①については、収入金額が、概ね3年程度の期間300万円以下で、かつ主たる収入に対する割合が10%未満の場合は、僅少と認められる場合に該当して、雑所得として判断するとしています。
 ②については、概ね3年程度の期間赤字で、かつ赤字を解消するための取組を実施していない場合は、営利性が認められない場合に該当して、雑所得として判断するとしています。特に、赤字を解消するための取組を実施していない場合とは、収入を増加させる、又は所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合を指すとされています。

3.令和4年度から適用される

 上記の「注」書きの①と②は、両方を満たした場合ではなく、それぞれで判断されます。
 例えば、副業の収入金額が300万円超であったとしても、過去3年間ずっと赤字で給与所得と通算してきており、今後も赤字が続くと見込まれる場合には、雑所得として申告しなければいけません。
 この境目の判断については、令和4年度の確定申告から適用されることになります。昨年度までは事業所得として申告していたとしても、再度、これらの基準に当てはめて検討し、雑所得として申告しなければいけない人は多いと予想されます。

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