事務所だより
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「新型コロナウイルスが原因の赤字で、2年前の法人税を取り戻す」

1.2年前の法人税でも還付できる
新型コロナウイルスの影響により、赤字になる法人がかなり多いと予想されます。この赤字は翌年以降10年間繰り越して、将来の黒字と通算することができます。とはいえ、資金繰りが悪化したことで、通算して法人税が節税できるまで待てないかもしれません。そのため、資本金が10億円以下の法人に限られますが、前期が黒字であれば、それと通算して法人税を還付できる制度があります(地方税に還付の制度はありません)。このとき、原則として、1年前の黒字との通算まで、と制限されています。
ところが、災害による赤字(以下、「災害欠損金」という)だけは、1年前だけではなく、2年前の黒字とも通算できる特例があるのです。新型コロナウイルスは災害と認定されましたので、この特例が使えます。
2.災害欠損金の具体的な使い方
例えば、上記の図で、当期の赤字は災害欠損金を合わせて、2,000万円となりました。前期の利益は1,500万円ですので、通算しても311万円の法人税を全額還付することができません。そこで、災害欠損金を前々期の利益1,000万円と通算して、通常の赤字だけを前期の利益と合算すれば、赤字を全部、使い切って、最大限の法人税が還付できます。
また、前期の利益として500万円(1,500万円-1,000万円)が残りますので、翌期に災害欠損金が発生すれば、それと通算することもできます。
3.災害欠損金に該当する費用とは
赤字のうち、どの部分が災害欠損金に該当するかですが、具体的には、下記の費用となります。
① 飲食業者等の食材の廃棄損
② 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
③ 施設や備品などを消毒するために支出した費用
④ 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用
⑤ イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
これらは、災害によって資産を廃棄・除却したときの損失、又は災害の拡大を防止するための費用です。そのため、これらに該当しない下記の費用は、災害欠損金とはなりません。
① 客足が減少したことによる売上減少額
② 休業期間中に支払う人件費
③ イベント等の中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料
④ 取引先が倒産したことによる売掛金の貸倒れ
⑤ 有価証券の評価損
もし、当期の赤字を2年前の黒字と通算する可能性があれば、災害欠損金に該当する費用の領収書だけ、他とは区別してまとめておきましょう。