事務所だより

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「譲渡所得を申告した後、実際の取得費が判明した場合の対応」

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1.概算取得費を使う方法とは?

 個人が不動産などの資産を譲渡したときに売却益が発生すれば、譲渡所得として確定申告する必要があります。この売却益は下記の数式で計算します。

資産の売却益=売却価格-取得費-譲渡費用

 取得費とは購入した金額や購入手数料などを合算した金額であり、譲渡費用とは仲介手数料などの売却するために、直接かかった費用のことです。

事務所だより  この売却益を計算するときに、法律では、譲渡した不動産の実際の取得費が不明の場合、もしくは「実際の取得費<売却価格×5%」である場合には、売却価格の5%を取得費とすることを認めています。これを概算取得費と呼びます。さらに、不動産以外の資産、例えば、株式、絵画または金地金などの資産についても同様に、概算取得費を使って売却益を計算してもよいとされているのです。
 ただし、ストックオプション、借家権等のように、そもそも取得費がないものについては、概算取得費を使うことはできません。

2.更正の請求は可能なのか?

事務所だより  当初の確定申告において、実際の取得費が分かる契約書や領収書等の証拠資料が見つからず、概算取得費を使って売却益を計算していたとします。
 ところが、後から実際の取得費が分かる証拠資料が見つかり、かつ「概算取得費<実際の取得費」ということが判明した場合に、更正の請求はできるのでしょうか?
 更正の請求とは、所得税の申告期限から5年以内に、当初の申告書が間違っていたことで納め過ぎていた税金を還付してもらうための手続きです。ここでのポイントは概算取得費を使って売却益を計算したことが、「当初の申告書が間違っていた」ことに該当するかどうかです。この点について法律では、「『概算取得費<実際の取得費』となっていることが証明された場合には、その実際の取得費を使って計算する」と規定されています。とすれば、「概算取得費<実際の取得費」が証明できれば、実際の取得費を使うことが正しい計算方法となりますので、更正の請求は可能と解釈できるのです。

3.取得費に合算できる費用とは?

 概算取得費は、購入した金額が不明な場合等に使える特例です。そのため、購入手数料などを概算取得費に合算することはできません。つまり、概算取得費を使うならば、その金額だけが不動産等の取得費とみなされるのです。
 一方、実際の取得費に合算できるものは購入手数料だけではありません。土地の賃貸借契約の更新等を行うときに支払った更新料も取得費に含まれます。そして、相続や贈与により取得した資産については、下記の付随費用も取得費に合算できるのです。

① ゴルフ会員権に係る名義書換手数料
② 賃貸不動産以外の不動産に係る登記費用
③ 株式の名義書換手数料
④ 特許権、鉱業権の登録費用

 特に、②については、相続したときの名義書換に要した登録免許税や司法書士の手数料も取得費に含まれるという意味なのです。
事務所だより  ということで、後から実際の取得費が判明したことから更正の請求をするならば、これらの費用も忘れずに取得費に加算して申告するようにしましょう。

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